ドイツには、こんな小話があるそうです。
2匹のカエルがいました。ある夜、2匹ともミルクの壺に落ちてしまいました。
「もう駄目だ」。
一匹は早々に諦めてそこの方へ沈んでいき、一匹は、
「なんとかなるさ」
と泳ぎ回っていました。
翌朝、人々はチーズの上に、ちょこんと座っている1匹の
カエルを発見しました。
私たちはともあれば悲観的になりがちです。
悪いことを予想し、「ああなったら・・・・・」と考えて、
簡単に諦めてしまいます。
しかも、それを人にしゃべる。”思慮深い”かのように。
それを聞いて楽しい人は、誰もいないというのに。
こんな時、「まぁ、何とかなるわよ」なんていうのは、
いかにも”思慮浅薄”な人のように見えてしまいます。
でもそうでしょうか。
「楽観的であることは意志の力による」と聞いたことも。
不安や悩みを意志によって抑え、元気で明るく振舞う。
こちらの方が、不安を垂れ流す人よりも、はるかに聡明で
あり、思考力や意志の強い人ではないでしょうか。
私は、チーズの上に座っていたあのカエルに、敬意を込めて「楽天カエル」と名づけました。
さらに聡明な楽天性、これを「楽天力」と呼ぶことに。
思い出すのは、20年以上も前、今は亡き、作家・宇野千代先生にお会いした時のことです。
私は、先生の取材記事を書くのが恐ろしくて、「お気に召さないかもしれませんが」と言ったのです。
そうしたら先生は、「何を言っているんですか。
自分を天才だと思いなさい。
顔だって毎日、鏡を見て『べっぴん』だと唱えていれば
”べっぴんさん”になるんです」と。
自分を天才だと思いなさい。自身を持ちなさい。
そうすれば道が開けるでしょう、と。
これほどの励ましがあるでしょうか。
先生も”楽天カエル”だったのかもしれませんね。
もしかしたら、先生も、鏡を見ては”べっぴん”だとにんまりしていたりして。
気持ちがなえ、うつうつとし始めたら、チーズの上に座っているカエルを想像します。
思わず「フッ」と笑いが込み上げ、元気に。
「楽天力」のおかげではないでしょうか。
ノンフィクション作家
沖藤典子の記事より
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